最近スノウは、リドに対して少し余所余所しい。
余所余所しいというか、自分のことは自分でやるよと言って全く頼ってくれなくなった。
ケネスやタルはいい傾向だと笑うけれど、リドにしてみたら少し寂しい。
「大丈夫だよ、リド。自分でやるから」
「もう手が傷だらけだけど」
「……平気だから」
ちくちくと、スノウが繕っているのは普段着の袖だ。うっかり引っ掛けて破いてしまったらしい。
針と糸を手に繕い方を教えてくれないかとスノウが言いに来たのは、もう三十分も前だ。おおよそ十センチ足らずの縫い物だが、まだ半分も終わっていない。おまけに手は刺し傷で見ているほうが痛々しい。
「……やるよ」
「大丈夫だよリド」
「……」
「……」
無言で布地を引っ張り合う。
スノウは確かに変わったけれど、こうやって強情なところは変わってない。リドは溜息を吐きたくなった。
甘やかしている、だの、甘やかすなよ、だの。ケネスやタルは勝手なことばかりを言う。
甘やかしているつもりではないと言えば、全くの嘘になるけれど。
「……分かった」
リドは両手を挙げて、降参というようなポーズを取った。「でも、」続ける。
「もう始めて時間が経つから、目も疲れただろうし、休憩にしよう」
スノウはそれなら、と言って頷いた。
お茶の準備を始めようと立ち上がりながら、リドはその前に救急箱を持って来なければと気づく。
スノウの手が傷だらけというのは、やっぱり見慣れない。これから先も見慣れることはないだろう。
リドはちらりとスノウの手を窺い、嘆息した。
end
2006.04.01
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