novel



 目が覚めたら隣に人の気配。昨夜はひとりでベッドに入ったはずだし、今は艦内にいるのだから潜り込んでくる人間もいないはずだった。
 幼なじみの所業により、こういう体験はなれているものの、あまりしたくない(なれたくない)類いのひとつだ。アスランは溜息を吐きつつ、起き上がって隣を見た。
「………………何してるんだ、シン」
 溜息とともに問うと、シンはまだ覚めきらないのか目を擦り、急にがばりと起き上がった。
「え!? あれ?」
 頭をかきながら、シンの視線は時計に注がれる。
「もう朝?!」
「お前一体いつから潜り込んでたんだ?」
 シンの悲鳴にアスランは呆れた。シンはそこで漸くアスランと目を合わせた。ばつが悪そうに口を尖らせる。
「……昨日の夜」
「何のために」
「アンタを待ってたに決まってんだろ!」
 そして待つ間に転がっていたら、うっかり寝てしまったらしいことを、シンはぼそぼそと白状した。
 待ってた? アスランは首を傾げ、昨日の記憶を辿る。
 タリアやアーサーと今後のことを話し合ったりなんだりで、そういえば一日シンとは会っていない。おまけに夜には疲れきってしまい、部屋に戻るなり寝てしまったのだった。
 シンがいても気付かなかった可能性が高い。
「何か、用があったのか?」
「え、」
「用があったから待ってたんだろう?」
 アスランが促すと、シンは言葉に詰まった。ちら、と時計を盗み見る。
「……いいよ、もう」
「何がだ?」
「もう、過ぎちゃったし」
「だから、何が」
 すっかり拗ねてしまったシンに、アスランは辛抱強くたずねた。
「昨日は何かあったのか?」
「……た、」
「た?」
アスランが間近に覗くと、シンは目を泳がせる。それから恥ずかしそうに、ようやっと答えた。
「……誕生日」
 言葉を理解するのに、アスランは数秒を要した。
「昨日?」
 シンはこくっと頷いた。
「誕生日?」
 再び頷いた。
「お前の」
 三度頷いた。
 するとアスランは心から呆れた、というように深々と溜息を吐いた。「お前な、」
「そういうことは事前に言ってくれ」
 何にも用意できないじゃないか。言いながらも、アスランは色々と、今からでも何かプレゼントできるものはないかと考える。
  しかしシンは拗ねた顔のまま、首を振った。
「別に、何かもらおうと思ったわけじゃないし」
「? じゃあ、何でわざわざ人の部屋に潜り込んでたんだ?」
 アスランの問い掛けにシンはまたぐっと言葉に詰まる。
 単に祝ってもらいたかったなどと、素直に言えるような性格はしていない。
 答えかねているシンに、アスランは「仕方ないやつだな」と笑い、わしゃわしゃとその頭を撫でた。
「誕生日おめでとう、シン」
 柔らかな笑みを浮かべられ、シンは真っ赤になる。
「じゃあ、朝食に行くか」
 そう言ってアスランがベッドを降りた後、シンはひとりこっそりと触れられたところに手をやる。それからくすぐったそうに、笑った。


end

2005/09/02


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